セイフティネットの構築と学習開発専門家の育成

3月29日の日曜日に日本教育工学会主催のFD研修・ワークショップが開催されましたが,その実施をわれわれの研究所が担当することになりました.これまで大学の学生の授業,中学校初任者の研修などで実施してきましたが,主として大学の教員を相手の研修とあって,多少の不安はありましたが,結果的には大変充実した研修を提供することができました.40名の定員のところを当初は大幅にオーバーしていましたが,急に参加できない人もでてきて最終的には40名ぴったりの研修会でした.

午前10時から午後5時30分までの討議などを中心としたワークショップを用意したのですが,時間が足らないほどで,時間内に最後の報告書を書くという課題ができなくなり,結局オンラインでの提出ということになりました.そのときに使用した教材やスライドの資料などを近くこの研究所のホームページにアップする予定です.

協調自律学習がどのようにして開発されてきたかを2000年からの経緯を紹介したのですが,この種の学習は一朝一夕には計画が実現するものではなく,長い期間をかけて計画的に移行していく必要があることを理解していただけたのではないかと思います.今回紹介した方法論は,公式外学習による専門職の学習にも発展できるものですから,セイフティネットの構築にも有効な方法論です.現在われわれが企画している大学校についても最後に少し紹介することができました.

外国からの理論と称するものを導入しても,技術に関してはうまくいかないということをわが国はさんざん経験しています.それは明治時代の文明開化のときの外国技術の導入とお雇い技術者の招聘においていろいろと経験しています.また第二次世界大戦ごの復興期にも国産の独自技術がその後の産業の発展に大いに貢献しました.ホンダのオートバイ,ソニーの電子機器などの工業製品で輸出しているものはほとんどが国内で開発された技術です.

今回紹介したシンボリック設計法ももっぱらヨーロッパで発表してきたものですが,まったく新しいコンセプトの研究は国内の学会誌ではなかなか評価されないので,若い人はどんどん海外で発表してみるとよいでしょう.わが国の教育界では,情報通信技術に強い人は哲学書が読めない,教育理論を講ずる人は情報通信技術に弱いということですから,わが国独自の教育理論が生まれるのは夢物語なのかもしれません.