韓国とフランスの教育基本法

先に教育基本法に対して学習基本宣言を考えてみてはと提案しましたが、教育基本法は他の国ではどのようになっているのでしょうか。韓国とフランスの教育基本法についても文部科学省のホームページからアクセスできたので、その一部を紹介します。

韓国教育基本法
1997.12.13 法律第5437号
第1章 総則
第1条(目的) この法律は,教育に関する国民の権利・義務と国家及び地方自治団体の責任を定め,教育制度及びその運営に関する基本的事項を規定することを目的とする。

第2条(教育理念)教育は弘益人間の理念のもと,すべての国民をして,人格を陶冶し,自主的な生活能力と民主市民として必要な資質を備えるようにし,人間らしい生活を営むべく,民主国家の発展と人類共栄の理想を実現することに寄与することを目的とする。

第3条(学習権)すべて国民は,生涯にわたり学習し,能力と適性によって教育を受ける権利を持つ。

第4条(教育の機会均等)すべて国民は,性別,宗教,信念,社会的身分,経済的地位,又は身体的条件等を理由に教育において差別されない。

第5条 (教育の自主性等)
①国家及び地方自治団体は,教育の自主性及び専門性を保障しなければならず,地域の実情に合った教育の実施のための施策を樹立・実施しなければならない。

②学校運営の自律性は尊重され,教職員・学生・保護者及び地域住民等は法令の定めるところにより,学校運営に参加することができる。

以上のようになっています。第2条では「自主的な生活能力と民主市民として必要な資質を備えるようにし、人間らしい生活を営むべく」となっていて国民の生活の視点から規定されています。また第3条では学習権をきっちりと規定してまいす。また、第5条では教育の自主性と専門性を保障することを定めています。

ではフランスの教育基本法はどうでしょうか。

1989年7月10日付け教育基本法(ジョスパン法)
第1条
教育は,国の最優先課題である。教育という公役務は,生徒及び学生を中心に置いて構想され組織される。それは機会の均等に貢献するものである。
人格の発達,初期教育・継続教育の水準の向上,社会生活・職業生活への参加,及び市民としての権利の行使を可能にするため,教育を受ける権利は各個人に保障される。

第1条はさらに続くのですが、フランスは1989年の時点で「生徒及び学生を中心において構想され組織される」ことになりました。

わが国の教育基本法には学習権という文言も生活能力という視点もありません。「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」となっていますが、勤労を望んでもそれができない時代であるということの認識はまったくないのでしょうか。あまりにもピント外れの教育基本法であるといってもよいでしょう。