福祉国家は危ない綱渡り

8月末の衆議院選挙で政権が移動することになりました。このことはわが国の議会政治史で特筆すべき出来事です。これまでの自公連立から民主党の主導による革新勢力の政治に転換されることになりました。

これで福祉関係の事業が拡大するでしょうし、さまざまな手当や給付金が支給されるような状況です。かつて福祉国家を目指したヨーロッパ諸国は、1960-70年代に財政破綻をしかねない状況まで国家財政が追いつめられました。その頃にストックホルムを訪れたことがありますが、大変暗い感じであまり良い印象はありませんでした。

しかし最近訪れると大変明るくたくさんの子どもを見かけます。福祉国家財政破綻に陥ったときに生まれたのが生涯学習ということと生涯スポーツの2つの概念でした.死ぬまで社会で活躍し,できるだけさまざまな福祉給付金を受けなくとも元気に過ごせるようにすることです.そのために高等教育段階まで無償で学習できるような環境を整えようとしているのですが,わが国ではこのようなセイフティーネットの構築が遅れているので,現状のままで福祉政策を拡大すると財政破綻に陥るおそれがあります.

これまで生涯学習というと定年後の老後の余暇を楽しむためのコースが多いのですが,現在ヨーロッパ諸国が取り組んでいるのは変動社会での雇用性確保ならびにEU統合後のヨーロッパ域内での自由な移動にともなう労働移動性を支えるための各種の職能資格の整備などです.このような実務可能な専門能力を習得するための学習環境を整備しているのが現在のヨーロッパの生涯学習社会の政策です.