PISA学力と失業率と移民労働者

OECDが実施する学力調査はPISA2003ならびにPISA2006としてわが国でも大いに話題になりました。フィンランドが1位を占めているのに対して、わが国は数学リテラシー科学リテラシー、読解力で順位を下げてきているので学校での基礎基本の指導の徹底が叫ばれています。しかし、OECDがこの調査結果をどのように利用しようとしているかについてはあまり紹介されません。
つぎのグラフはわが国とフィンランドアメリカの到達度別の分布を示したものです。

この分布の状況からうかがえることは数学的リテラシーではレベル6ではわが国が一番高いのですが、レベル1以下あるいはレベル1の生徒がファンランドは少ないのです。フィンランド教育省はこの成績が発表された直後に数学的リテラシーはレベル2以上をもって教育成果とみなすという政策でしたからその点で成功していたといえます。また読解力についてはレベル3以上を教育成果とみなしていたので、その点でもわが国よりも成功しています。アメリカは学力格差が大きく、しかも低位の子どもが多いので全体の順位もひくいのですが、わが国の読解力の分布がアメリカに似てきたことは気になります。
数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力といった学力は国全体の知的レベルの維持にとっても重要ですが、フィンランドはドイツ、フランスなどについで失業率が高い国です。しかも外国からの移民労働者を多く抱えているのですが、そのような移民の失業率と原住民の失業率の差がもっとも高いのがフィンランドです。したがってフィンランドはそのような失業を少なくするためにも学力の低い人を少なくして、生涯にわたって学習できるようにすることが福祉政策として極めて重要なのです。わが国では失業率が高くなると産業政策が重視されますが、失業保険など手厚い保護を国是としている国にとっては失業者を出さないように低所得者層の人々が自立できるように基礎学力を重視しているのです。


なお、ヨーロッパで失業率が高い原因の一つに国際難民を多く引き受けている状況があります。フランスもドイツもスウェーデンも多くのイラク難民を引き受けているのですが、この人々の教育問題は深刻です。わが国にはこのような移民や難民についての学力調査の結果は公表されているのでしょうか。イラク難民の受け入れについてはアメリカも日本もきわめて少ないです。